最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)773号 判決 1949年6月18日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人伊能幹一の上告趣意第一點について。
原審は第一回公判において審理を終結し判決宣告期日を宣告するに當り裁判長は「來る九月二一日」とのみ指定して時を指定しなかったことは所論のとおりである。
しかし舊刑訴第三二〇條第一項には「裁判長は公判期日を定むべし」と規定してあって公判期日を定めるには日及び時をもってすべしとは規定していないのであるがただ從來の慣行によって日及び時を指定しているのである、それ故原審が判決言渡期日を指定するにあたり日のみをもってし時を定めなかったとしてもその期日の指定を目して違法なりと言うことはできない。しかも記録によればその指定された日に辯護人千葉長も出頭し裁判長において本件判決を言渡したことが明かであるから右判決言渡を違法なりとする所論は採用できない、論旨は理由がない。
同第三點について
警察法第三五條によると都道府縣国家地方警察に警察長の外警視、警部補、巡査部長及び巡査たる警察官その他所要の職員を置き(第一項)警察官の階級は警察長、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とする(第二項)ことを規定してあり同法第四六條によると市町村警察には警察長及び必要適當な階級の警察吏員を置きその階級については前示第三五條第二項の規定を準用しているのである、これ等の規定によってみると巡査部長は從來と異り階級名となったのであって巡査部長は巡査のうちに包含せられないのである。而して同法附則第一九條には「他の法令中警察官に関する規定は当該警察官及び警察吏員に関する規定とする」と規定してあるのであるから舊刑訴法第二四八條及び第二四九條の關係においては国家地方警察の警察官及び自治體警察の警察吏員のうち巡査のみが司法警察吏となり巡査部長以上は司法警察官に該當するものと解すべきである、それ故巡査部長は從來と異り司法警察吏ではなく司法警察官となったのである、然らば原判決が證據として採用した石田良子に對する聽取書は司法警察官大館町警察官巡査部長佐藤賢治の作成したもので司法警察吏の作成したものではないのであるから原審がこれを證據として採用したことは正當である。從って論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴施行法第二條舊刑訴第四四六條により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)